Friday, January 20, 2012

N116

N°116 感情をうまく言葉にできない人へのエッセリーニ

最高に感じの悪い男のアスパラガス畑から、
ある日異様に太くて、異常に長いアスパラガ
スが2本目を出しました。彼は農家仲間にず
いぶん長いこと自慢しました。仲間たちは充
分この男を嫌っていましたから、この世界一
長いアスパラガスの話なんて聞きたくありま
せんでした。

この感じの悪い男はものすごいケチで、感情
をも表に出さない人でした。そして、みんなの
中ではいつも一番の量を収穫していました。
このアスパラガスのことでより自信を持つよ
うになったのです。しかし数日後、畑に出たと
き最高に感じの悪い男は小さな心臓マヒにな
りました。そして2本のアスパラガスが芽を出
した地面のちょうど真下から、黄色い芽のあ
る薄暗い顔があらわれました。2本の巨大な
アスパラガスとは、実はその角だったのです。
最高に感じの悪い男は家に閉じこもり、もう
外には出てきませんでした。窓から外を見る
とその悪魔が日に日に大きくなっているでは
ありませんか。地面はゆっくりとそいつを生み
出していきます。さながら彼の作った最高の
作品であるかのように。
実際恐怖と賞賛の混ざったような気持ちでそ
の悪魔を見つめていました。彼の土地はこの
ようなものを生み出したことはありませんでし
た。このちょっとおかしな父親心が芽生えた
おかげで、彼は豊かな感情を取り戻しました。
彼がどのようにこの悪魔と共に暮らしたのか
はわかりませんが。
彼は感じの悪い男のままではありましたが、
目の奥にはちょっと変わった優しさを抱くよう
になりました。時々畑で笑い、一人で話してい
る姿がみられるようになり、踊りだす姿さえ見
た人もいた、とのことです。そんな小さな地方
で語られた伝説です。